3. 多様化するサービス

当社のようなアジアの果ての小さな旅行会社にも、
ホームページでイタリア旅行専門店と謳っているせいか、新規にオープンしたとか、
日本人にも来て欲しいとか、アグリツーリズモのほうからコンタクトをとってくる場合があります。
どうやらアグリツーリズモは今も増え続け、宣伝や集客に一層心を砕き、
その結果、単にアグリツーリズモと言うだけでひとくくりにできないほど、
タイプやサービスに広がりが出てきているようです。

 

●B&Bタイプの増加と最低宿泊数の減少
滞在型が主流のアグリツーリズモ、当初は通常でも1週間、
ハイシーズンには2週間からの最低宿泊数を求めるところもありました。
ところが最近は、リビングやキッチンも備わったアパートタイプの他に、
B&Bタイプ、すなわち最低宿泊数を2-3泊とし、
朝食つきで部屋だけを提供するところが増えてきました。

これには利用する側の都合があります。
ある調査によると、近年、一度の休暇でのアグリツーリズモ滞在日数が減ってきているそうです。
ひと夏を家族が全員で一箇所に滞在して過ごすオーソドックスなスタイルは、
徐々に変わってきているのかもしれません。
たとえば、夏の大半は海辺で別荘で過ごすけれど、
その帰りに一週間ほど山の中のアグリツーリズモで過ごし、
美味しいワインやオリーブオイルを買い込んで帰省する、
その際せっかくだから農家の主婦の自慢の郷土料理を味わいたい、
となるとキッチンなどは必要ない、というふうに。

●カテゴリーやサービスの多様化

そうなると、なかには限りなくホテルに近いサービスを要求する人も出てきます。
アグリツーリズモの側も(特に新規参入にこの傾向が強いような気がするのですが)、
選任の常駐者を雇い、レセプションを設け、宿泊客の利便性をより高めようとします。
レセプションは、スポーツやアクティビティーの企画・手配、ハイヤーの手配、
レストランやワイナリーでのテイスティングの予約等、滞在客のための便宜を図る他、
トスカーナの風景写真を撮影するセミナー付ツアー、一週間のクッキングコース、
あるいはオリーブ収穫体験ツアーのような個性的な特別プランを設定し、
(特にオフシーズンの)集客にも力を入れるようになってきました。

●日本人にも利用しやすくなった
私たちにとって、このようなアグリツーリズモの出現で一番ありがたいのは、
最低宿泊数が2-3泊であることです。
これにより、気軽に他の都市観光と組み合わせたプランが可能となりました。
たとえばフィレンツェに三泊、トスカーナのアグリツーリズモに三泊して、
その間にワイナリーを訪れ、お料理教室に参加し、
一日はハイヤーで近隣の小都市を訪れるなど、歴史と自然の両方を堪能する、
充実した旅が現実のものとなるのです。
レンタカーだと躊躇する人も、一部をハイヤー利用するなどで、
イタリアのディープな地域を、安全でかつ効率よく廻ることができます。
B&Bタイプのアグリツーリズモでは、夕食を用意してくれるところが多いので、
郷土料理を心ゆくまで味わえるのも大きな魅力の一つです。

●今後注目されそうな地域
アグリツーリズモはイタリア全国にありますが、
その周辺に歴史のある都市があると一層魅力が増します。
前回当社企画でご紹介したウンブリアも、エトルリアに起源を持つ古都が点在し、
食においても素晴らしい地域で、今後じわじわと底力を発揮しそうなところですが、
もう一箇所私が注目しているのはマルケ州です。
こちらはフィレンツェやボローニャ、ペルージャなどと組み合わせることも可能ですし、
なによりルネッサンスの素晴らしい宮廷文化が花開いたウルビーノがあります。
またしっとりとした自然景観も自慢で、
昨年から当社とお付き合いが始まった小さなアグリツーリズモでは、
リンゴやラズベリーの季節にはそれらの収穫とジャムつくり、お料理教室などが体験できる他、
イタリア語個人レッスンもリクエストに応じてくれます。

また、美食とスローフード、美味しいワインで名高いピエモンテ州や、
近年じわじわと人気を増している南イタリアのプーリア州なども、
周辺の世界遺産や魅力的な小都市との組み合わせがおすすめです。

(この記事は、2006年にJITRAに連載したものを元にしています)

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