2. トスカーナのアグリツーリズモ滞在・パーフェクトシミュレーション

今回は、まぶしい陽射しに銀色のオリーブの葉が光る、晩夏のトスカーナを訪ねてみましょう。
気のおけない友人との二人旅です。

 

●1日目 フィレンツェ着 サン・ドナートへ
欧州の経由地で乗り継ぎ、フィレンツェに到着した。
夕方の6時を過ぎたというのに、空はまだ青い。
送迎車を頼んでいたので、出口付近に固まっている人の群れに目をやる。
すぐにネームボードを持ったドライバーを見つけた。よかった、感じのよさそうな人だ。
車はすぐに市街地を抜け出た。
とたんに勢いよく空に伸びる糸杉が目に付き、トスカーナに来た!と胸が躍る。

両側に濃い緑が続く道路を運転手がカッシア通りだと教えてくれた。
するとこの道を古代ローマ時代には馬車が走っていたのだ。
二千年の時の流れが、確実に今につながって感じられる。
やがて車は幹線をはずれると目的のアグリツーリズモに到着した。空港から1時間弱。

●2日目 アグリツーリズモでのんびりする
夕べは、オーナー婦人のガブリエッラの手料理を戸外でサービスされた。
同宿のイタリア人やアメリカ人、もちろんオーナー夫妻も一緒にテーブルを囲む。
トマトソースのパスタも、牛肉の炭火焼も素朴でとても力強い味わいだった。
パンツァネッラというパンの入った冷たいサラダの美味しかったこと。
これもトスカーナの家庭料理の定番だという。
やさしい闇が眼下の田園を覆っていく様がため息がでるほど美しかった。

今朝は時差ぼけのためか、早く目が覚めてしまった。
鳥のさえずりに、自分が自然のまっただなかにいることを実感する。
午前中はプールサイドでのんびり過ごし、そのあとサン・ドナートに出かけてみた。
田舎道を20分ほどのちょうどよい散歩コースだ。
道の端に咲く花をたくさん写真に撮る。

サン・ドナートは本当に小さな街。でもインターネットができる観光案内所もある。
旅先でまでメールチェックはごめんだねと、友人と笑いあう。
トラットリアでゆっくりと昼食を楽しみ、食料品店が開くのを待つ。
野菜、果物、生ハムとチーズ、それにパンなどを買う。
部屋には小さなキッチンがついていたので、夕食は自分たちで簡単に済ませるつもり。

●3日目 シエナ散策
1日目と同じドライバーが約束の時間に迎えに来てくれた。
今日はシエナとモンテリッジョーニを廻る。
シエナは観光客で賑わっていた。まずカンポ広場を目指しマンジャの塔に登る。
貝殻の形をした広場と明るい茶色に彩られた街並みを見下ろすと、実に気持ちが良い。
絵の好きな友人は市庁舎の美術館や、
国立絵画館のシエナ派の絵の前でしばらく固まっていた。
色大理石で出来たドゥオーモも壮麗で、とても厳かな気持ちになった。

レストランが軒を連ねているいる中から、ドライバーおすすめの店を発見。
昨日の夕食の味とボリュームを考えて、お昼は軽く済ませる。

ガイドブックにも乗っていないモンテリッジョーニは、
完璧な城壁で囲われたとてもかわいらしい街だった。
30分もあれば土産物屋を冷やかしながら一周できる。
古い井戸の上に猫がいて、いい被写体になってくれた。
城門の近くの素敵なレストランも試してみたかったな。
よし、次はここでトリュフのパスタを食べよう。

●4日目 キャンティのワイナリーに寄ってからフィレンツェへ

専用車が10時に迎えに来てくれる。
また絶対に来るからとオーナー夫妻に約束して別れを告げる。
ワイナリーで試飲、気に入ったビンテージの一本をおみやげに買った。
そのあと昔からワインの集積場で栄えたというグレーヴェ・イン・キャンティに立ち寄る。
広場をぐるりと囲んでいるアーケードのおかげで、雨が降っても商取引ができたのだという。
きれいな水が流れる川べりには、キャンティワインのシンボルの黒い雄鶏のモニュメントがあった。

このあとフィレンツェにも三泊して華麗なルネッサンスの美とショッピングを楽しんだ。
でも今も時々心に浮かぶのは、美味しい食事、宝石のような小さな街、
そして田園を見下ろす丘の上で過ごした、夢のようなバカンスの日々だ。
気がつくと、時間がなくて行けなかったサン・ジミニャーノやボルテッラを訪ねるために、
次回はレンタカーに挑戦しよう、などと考えていたりして…

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